懇意にしている芸能人の事務所の主催でディナーショーの企画があり、その現場で撮影したハンディカムの映像をDVDにできないだろうか?という内容のお尋ねがありました。なぜDVDディスクにしたいのかと言うと、現時点で再生環境が幅広く普及しているDVDディスクを用いて、関係先に配布したり企画の履歴として社内に保存しておくことが目的です。ハイビジョン映像の規格としてはブルーレイが存在しますが、今の時点で一般的な家庭や職場で映像を見ようと思ったら、やはりハイビジョンのフォーマットよりもスタンダードのDVDの方が一般的でしょう。件の事務所からの問い合わせの理由も、誰でも見られる・と言うことが重視されていると思います。
ところで、ハンディカムはSONYの商品名ですね。いわゆるデジタルビデオカメラで、ハードディスクを内蔵してそこに画像を溜めておくタイプのものです。ハードディスクですから、撮り続けていればいずれ容量がいっぱいになってそれ以上撮影が出来なくなります。動画のフォーマットはAVCHD(H.264/MPEG-4AVC)とよばれる規格で、記録画素サイズは1440x1080iで記録できるようです。
カメラをお預かりして作業に取り掛かりましたが、なにしろ当方はハンディカムの動画を扱うのは初めてです。そこで、動画形式の学習から始めました、まず、画像ファイルはデジタルビデオカメラからUSB経由で、簡単にPCに取り込むことが可能です。ファイル形式は、.m2tsという拡張子のファイルで、このままでは編集も何も出来ません。そこで、AVCHDの形式をPCで簡単に扱える.aviの形式に変換します。DVDで使用できる映像フォーマットにするために大事なことは、1440x1080iを720x480iに変換する時点での映像の扱いです。各種ユーティリティなどで単にサイズの変更だけを行うと、縦解像度の変更に伴ってインターレースがうまく保持されなくなってしまいます。そこで、AviSynthというソフトウェア+フレームレート変換・フィールド分解・高品質なサイズ変換プラグインを使用し、フィールドを保持したまま綺麗に映像の変換を行うアプローチを採りました。フィールドが保持されないと、実質的な動画の分解能(動きの細かさ)が、半分の1/30フレームにまで落ちてしまい、動きの滑らかさが損なわれます。ハイビジョン映像をDVDにするには、この辺りのノウハウは非常に重要でしょう。
ところが、この変換作業が結構時間の掛かる作業となってしまいました。軽い気持ちで、家の2GHzのPCで変換を掛けたら、2時間の映像を720x480iのHUFFYUV形式の.aviに変換するのに、9時間近く掛かってしまいました。しかし、いったん.aviにしてしまえば、後の編集などは普段のDVD制作と同じ要領で行えます。編集が完了した.aviファイルに対してMPEG2エンコードを行い、メニューなどの素材アセットの作成・オーサリングをすれば、DVDの完成です。
ハイビジョンから変換されたDVDを試しに再生して見ましたが、解像度の低下による解像感の低下は仕方が無いながら、ハイビジョン映像と比較でもしなければ十分な画質です。但し、撮影時に元映像に出てしまったブロックノイズやモスキートノイズなどのノイズ感もそのままエンコードされていますので、始めからSDビデオで撮影された映像にはやや劣ります。
今の時期ですから、ビデオカメラを購入する際には、半ば当然の選択肢としてハイビジョンのビデオカメラを購入することになるでしょう。そして、人に見てもらいたい・見せる必要のある撮影をすることもあるでしょう。ですが、ハンディカムを始めとしたハイビジョンカメラで撮影された映像を他人に見せようとすると、どうしてもパソコンの環境(※しかも、かなりパワフルなPC)と特殊な再生用のソフトウェアが必要になります。ですが、DVDディスクに変換すれば、ディスクを渡せば見られる環境がぐんと広がります。海外や国内で撮影した旅行の思い出・映像で作られた社内の研修資料・冠婚葬祭や各種行事の記録など、簡単に手軽に他人に見てもらうためには、やはり現時点ではDVDがベストでしょう。ハイビジョンカメラで撮影された映像ソースをDVD化するという今回の内容は、もしかしたらニーズがあるのかもしれないと思いました。そういった事案をお考えの方はどうぞご連絡を。撮影した映像や思い出、より多くの周りの人に見てもらいたいですね。