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2008年11月 アーカイブ

2008年11月07日

最近、ネットが嫌になった(I hate the internet)

当方がインターネットを利用し始めてからは20年弱、多くの方がその存在を知ってからは、もう10年くらいになりますでしょうか。今、皆さんはどんなことにネットを使っていますか?そして、ネットからどれだけの利便さを得て、どれだけの困ったことを感じて、どんな印象をお持ちですか?当方が同じ事を問いかけられたとしたら、どう答えるんだろうと考えてみるつもりになりました。

初期のインターネットはエキサイティングでした。技術者や新しいものに飛びつく若いGEEKたちは、コミュニケーションや主に技術情報を、カオスの中で楽しんでいました。もちろん、変わり者達の集まりですから、中には喧嘩も争いも、自己主張のぶつかり合いもありましたが、それらはコミュニティの中で調整が行われ(※その中のみでしか調整せざるを得ないからです)、コミュニティは活性の状態にありました。そこには現実の社会の有象無象が持ち込まれることなく、良好なカオス状態が保たれていたように思います。それに、コミュニティで語ることやアイディアは、いくらでも出てきそうだった。それは純粋な興味から生まれてくる、ワクワクするような内容ばかりでした。

現在のインターネットは、情報収集という目的にとっては便利になりました。しかし反面、マスメディア化し、主にビジネスフィールドとして機能し、きちんと管理されています。そこには、もう胸が広がるような広大さは感じられません。むしろ、息苦しささえ感じます。ここ数年でセカンドなライフを体験できる仮想3D空間がいくつか作られましたが、いずれも今にして思えば、今のインターネットそのものの縮図を先取りしていたのかもしれません。

情報伝達手段としてのインターネットに関しては、当方は今も中継やニュース、意見の開陳などにおいて非常に便利だと思っています。しかし、狭苦しさのキーワード、日本のウェブサービスにおいて特に感じるものには、情報の中央集積化・ソーシャルな情報の共有・同じサービスの氾濫、とりあえずパッと出てくるだけで、そのように思い浮かべてしまいます。今のインターネットサービスは、どんなに新しいものでも「これを使ってビジネスバリューを作ろう」という押し付けになってきているような感じを受けます。ですが、所詮はネットで出来ることなんかたかが知れていますから、飽きられるのも陳腐化するのも非常に速い。サービスを提供する側も、尻に火が着いたように提供するものを、常住必死で探しているのかもしれません。

情報そのものの取得に乗り遅れるのではないかという焦りで無闇に検索しまくったり、リンクを飛び回って時間を消費したり、わざわざ余計なことにかかずらって気分の悪い思いをしなくてもいいんですが、かつては自由な空間だったインターネットが、今は現実社会と同じように踊らされる為の場に思えるのは、妙な画一化を感じているからかもしれません。ブログが流行っているといえばブログが必須という観念を、CMSと騒ぎ出せばビジネスにはCMSが必須だと迫る。そうでなくては遅れているような・間違っているような不安心理に追い込まれれば、もう型にきっちりと嵌っています。なにやら利用しているのではなく、利用させられている感じなんですが、それは現実社会にそういう側面があるように、インターネットもこなれて(?)自然にそういう形になってきたのでしょうか。

本質的に多様性に富むはずの個人も、その狭苦しさの中で、更に狭隘なカテゴリを中心に情報発信を行っているように思えます(※ネットでやり取りできる情報には、PC・携帯・ネットと相性のいいものが選好されるからだと思います)。カオスというよりもむしろ放任で成立している2ちゃんねるには、ある種のコミュニティが何年も変わらず続いているようです。しかし、2ちゃんねるを専用ブラウザで見るような2ちゃんねらーは、もしかしたらインターネットのみならず2ちゃんねるにさえもフィールドの狭さを感じているかもしれません。

インターネットのような広い空間では、小さなグループが色々なベクトルに向かって活発に動いている状態がいいのですが、でっかい勝ち組が他を蹴落としていく状態で、情報の過剰な集積・共有と利用し合い・制御の強まりが行われれば、硬直化と平板化を招くと同時に、伸びやかさと正反対の問題を噴出させるでしょう。ネットサーフィンなんていう、自分の気ままにあちこち飛んで、飽きたらやめて本でも読んで・のように自分でネットへの向き合い方を作れた時代は、インパクくらいの時期が末期だったのかもしれません。そして、インターネットは、今後益々ビジネスフィールドとしての立場を強めていくでしょう。そこは、ビジネスの意図によって動かされるフィールドです。そこに参加することは、大型ショッピングモールや商業施設で過ごすのと同じように楽しいのかもしれませんが、散策や山登り・ハイキングのような、自分で行う楽しさ探しとはちょっと違うのでしょう。

今、当方は「閉ざされたネットワーク環境」を考えています。「閉ざされた」と言っても、招待で中途半端に開かれて馴れ合いで機能しているSNS、ポータルに吸い寄せられた人がなんとなく集まっているチャットルーム等とは違います。昔のパソコン通信のような環境です。検索エンジンのロボットが入り込んで引用を作ることも出来ない、まったく興味の無い人が訪れることも探し出してきて訪れることもない、暗黙のルールをもって自律できる人たちによって特定の話題が扱えるコミュニティです。こう書くと閉鎖的な印象や選民思想のような嫌なイメージを受けるかもしれませんが、そういう雰囲気よりも、むしろ昔の秋葉原の電気部品ショップや、大人だけが集まる繁華街の外れの辺鄙な場所にあるバーのようなイメージを想起しています。閉鎖的で自律的であるからこそ、安心と気楽さ・話の内容の深まりが期待できる気がします。誰でも無難に楽しめる開かれたインターネットはテレビと同じように楽しむ。そして、それ以外の閉ざされた場では独自性と自由な空気を求める。こんな感じです。

もちろん、インターネットがつまらない・昔と比べて面白くなくなったなんていっているのは、単に年を重ねた当方が対応を拒んでいる可能性もありますので、状況を再度検討してみたり、世代やジェンダーを跨いで広く色々な意見を聞いてみようと思っています。ただ、外からは絶対に見ることの出来ない通信機能とインターフェースを持ったパッケージは作ってみたいと思っています。自律的なコミュニティの意見交換や情報交換の場に提供でも出来ればなあ…と思っていますが、いつになったら作れることやらわかりません。

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