Google StreetView 見ました
日本語のGoogleマップでリリースされたストリートビューですが、さっそく見てみました。
当方としては、気になるのはやっぱり技術面です。どうやってやってるんだろうと思いまして、ぱっと考えてみました。まず、6台のカメラを用意して、正立方体の外側の法線ベクトルにカメラをセットします。サイコロの各面の真ん中に、広角のカメラがある・とかんがえればいいでしょう。それで、車を走らせながら、一定の距離間隔で(ないしは交差点などの特殊なポイントにおいて)シャッターを切ります。その各面に撮影されたデータにパースペクティブをつけて、Flashで各面をつなげれば出来上がり…ではないでしょうか。全部、推測ですけれども、これが最もコストが低いと思います。
当方は、昔からゲームなどの「街の表現」が大好きで、車のゲームの背景・町並みとか、2次元のときは多重スクロールでの表現、古くはVRMLでのウォークスルー、ポリゴンの表現コストが下がってからは、街に関しては表現力が上がったことを素直に面白がっています。その感覚に近いものがありますので、「ぱっと見、面白い試み」と、まずは感じます。
当方は、著名な建築物などを見て、「おお、すげえ!」などと楽しんでいたのですが、多くの人のストリートビューの楽しみ方は、「いかに面白いショットを見つけられるか」にあるようです。例えば、自分の家の部屋の窓・たまたま撮影されたときに面白いポーズをしている人・撮影しているときの車を見つめている少年・風俗街や歓楽街周辺や施設の出入り口など、みなさん色々と面白そうな写真を発見・報告をして「遊んでいる」ようです。
こういった興味の方向からもわかるように、このストリートビューは、プライバシーという問題と切り離して考えることは出来ません。これまでにも、ライブカメラや風景写真などがネットで公開されていましたが、それらの情報は土地所有者の主体管理下に置かれていること、被写体(場所・シーン)は、プライバシーの公開に同意できる・例えば、情報発信者自身の部屋であること、ないしは公共性が著しく高い(=駅や公園など、人の出入りが激しく居住空間などではない)場所であることが、暗黙の大前提であるように思います。
ネットを離れたケースで考えてみましょう。道路に立っている人が、あなたの家の中を凝視していたとします(見えるかどうかは別として)。この場合、「いや、この道路は公共の場所だ。俺は、そこに立っていて、たまたまそっちを向いていただけだ」と言っても、それが問題に発展することは容易に想像できます。とある個人が、一市民である、あなたの家の写真を道路から撮って、「誰某の家」とインターネットで公開することは、問題があると考えられます。肖像権に関しても、「公人」「私人」は、区別がなされています。
これまでのGoogleマップよりもプライバシーが問題になりそうなのは、このストリートビューがあまりにも細かく鮮明な、道路以外(道路は公道でパブリックなものですが、そこを一つ超えた個人の敷地内などは、パブリックな場所ではありません)の周辺状況を持っていること、更に加えて言うなら、情報を元にした検索エンジンや広告宣伝事業を行っている、情報を牛耳って自在に操る企業「Google」によってデータが管理されていることでしょう。
ストリートビューのサービスは、プライバシーの問題において、海外では裁判に発展する事態にもなっています。Googleの主張としては、「衛星画像技術においても完全なプライバシーは存在しない」(参考:Google幹部の自宅をプライバシー保護団体がさらしものに)という見解?や、同記事によれば、Google社ビント・サーフ氏の「プライバシーなどは存在しない」といった主旨の発言があり、自社の技術とサービスに問題はなく、受け入れられる自信があることを訴えています。
そもそも、Googleのサービスには、研究開発の結果がそのままサービスに供されているような内容のものが多くあり、それが何かの先進性を感じさせたりするのですが、今回のストリートビューに関してはどうでしょうか。GoogleMapの開発チームが面白がるあまり、なにかの一線を踏み越えてしまっているのかもしれません。ぼかしを入れたからいいだろうとか、今や誰でも写真を撮ってネットで公開できる時代なんだという主張は、インターネットだけを背景にした強弁ではないでしょうか?
技術面で言えば、GoogleMap開発チームの感じているであろう面白さは理解できます。但し、それほど技術開発のコストが掛かっているわけでもなく、単に写真をつなげただけに過ぎません。仮に、写真をアニメ調にデフォルメして加工表示する技術を開発しているとか、画像から建物の頂点を取り出してポリゴンに変換して表示データの基礎にするような技術だったら、それはすごいですが、ストリートビューは「写真撮影の取材におけるコスト」だけが突出している状態でしょう。これが、例えばX3Dなどで表現されていたら、うわーGoogleすげぇ!と、拍手を送りたくなるのですが、このストリートビューは、写真をそのまま使うという、技術としてあまりにも単純で簡単すぎるお陰で、リスクや問題を内包しているように思えるのです。今後に注目ですね。
追記:画面データをどのように送っているかに興味があったので、調べてみました。360°カメラを使用しているのでは?という見解があったのですが、画面をみていると、360°カメラを使用しているにしては、不自然な画像のつながりが多い。それで、画像データを引っ張り出してみると、普通のパースを持ったカメラで撮影した画像を基本データに持っていることは間違いなさそうで、それにパースペクティブを与えて画面をつないでいるらしい感じがしました(この処理をリアルタイムでやっているかどうかは不明ですが、予めデータを作ってあるような気がします)。これは、歩道部分など地表の部分と、それより上のY座標での画像の接合がおかしいことなどでわかります。360°カメラなら、全体を一枚に収めることが出来るので、このような接合のおかしさは出ません(※解像度のぼやけなどは、画像の周辺部で起きます)。詳しく調べたい方は、GoogleMapのウェブサイト maps.google.co.jp/からストリートビューを表示する/mapfiles/cb/googlepano.*.swfから、画像として呼び出される/cbk?output=...を調べてみてください。