iPhoneの機能ではなく、iPhoneの存在感に注目
iPhoneが発売になりました。機能面や使い勝手など、賛否両論は様々にありますが、Appleらしい商品ではないかと思います。Appleと言えばMacintosh、私が始めて触ったのはSE/30で、その後サウンドの仕事をしている頃まで何台かMacを買い継いでいましたが、その頃からiPod・iPhoneに至るまで、営業戦略やマーケティングに関して多少の揺らぎはあったものの、“Apple”のCI(corporate identity / コーポレート・アイデンティティ・企業の特徴や理念など特有のイメージなど)は一貫しているように思います。iPhoneに関しては、当方の契約しているキャリアが違うので買いませんけれども…(もっとも当方はソフト屋さんですから、ソフトのマイナーリビジョンが上がるくらいまで、どんなハードウェアでも我慢して買わないほうです)。そのiPhoneとAppleを見ていて思うのですが、そこには確固たる存在感があり、明確な製品イメージ・ブランディングが見えてきます。このことは、ホームページのリニューアルや改装について、学ぶべき点を見せてくれるように思います。そこで、今回のテーマは「ウェブの重要性がより高まり、更にその傾向が進む一方である。そして、誰もが同じように考えるはず。だから、企業や個人のウェブサイトには明確な意図を持たせて、隙を作ってはいけない」として、現在リニューアルをするにはどういったアプローチを採ればいいのかを考えます。
とうに変革の過渡期を迎えているメディアの周辺
その前に、まず製品イメージやブランディングに関して重要な露出である「広告宣伝」についての現在を見てみましょう。今、テレビの広告収入が激減していると聞きます。テレビの番組作りと広告に関する、テレビに近い立場の方々からの辛辣な論評も目にします。昔であれば、特定の企業だけがテレビで広告を出すことが出来て、その影響は計り知れませんでした。テレビで宣伝をしていれば一流企業の証ですし、広告の受け手である視聴者も、そこに安心を見出していました。その状況が、明らかにインターネットによって変わってきました。情報を結ぶベクトルの先にあったテレビ・ラジオ・雑誌や新聞に、ネットという新たな方向が加わったこと、それは同時に個人が処理できる情報量を上回ってしまうことを指します。つまり、企業(※自社でも個人でも)のウェブサイトを1回見てもらうという機会が少なくなっている=見てもらうことの重要さが増していると言えます。
Appleの方法論や考えを類推する
Appleは、自社のアイデンティティをきちんと確立させるマーケティングで、ブランディングと製品ラインアップに一体感をもたせています。つまり、想定しているターゲットを明確に位置づけており、「リンゴのマーク・白をポイントに使うカラーリング・広告のキャッチコピーやフォント・インダストリアルデザイン」などの全てが、顧客に対してあらゆるシーンで結びつき、一体感を感じるようになっています。言ってみれば、どこの誰にでも買ってもらえる製品は特徴が無い(=アピール力が弱い)、すなわち、明確にAppleの商品を買ってもらえるような「顧客を作る」ことを目指しているというように考えられます。これは、昔から「Mac信者」「マカー」(※主に悪口で使われるようですが、そういう層が存在すると言うことをフラットに考えてください)などの言葉で表わされるように、Apple商品の存在感とその顧客関係が、明確に現れていることからも理解にたどり着けると思います。ウェブのリニューアルでAppleに学ぶべきは何か?
先の段では、ウェブを見てもらうことの大事さについて触れました。そして、Appleの存在感について述べました。では、Appleの真似をしてウェブを構成してみようか?会社のロゴを全ページに張って、イメージカラーで全ページを彩って、自社の製品イメージをウェブデザインにも取り入れて…なんて、それは間違いですね。と言いますか、現在ならその程度のことは誰でもやっています。では、Appleの何を学ぶか。それは、その存在感なのです。はっきり言ってしまえば、存在感を演出できるかどうかです。Appleは、自社の製品と購入する顧客の層を明確に位置づけて、それを実現するための様々なマーケティングを行ってきました。ですから、Appleのやってきた戦術は、Appleの持つ戦略に則って行われてきたものであり、結果としてそれがきちんとしたブランドと購買層を作り上げ、更に購買層の拡大を果たした。それこそが、AppleがAppleだからという存在感なのです。それを、そのまま真似しても仕方がありません。
「今」がどういう時代なのかを考える
繰り返しになりますが、一度ホームページを見てもらうことが、今の時代でどれだけ大切なのかを述べました。近年では、医院の廃業や医師の経営難など、昔ならちょっと考えられないような話も耳にします。企業は更に厳しい立場ですが、士業の方、旅館やホテルなどのサービス産業、いずれもウェブの影響はこれから益々大きくなるでしょう。そういった流れを考えると、もしホームページのリニューアルを考えるなら、過渡期である今ではないかと思います。“ホームページ、今のままで大丈夫?”見直してみるなら、今がいい機会だと思います。存在感はケースバイケースで、「それぞれの企業やサービスの魅力と顧客関係」と言う漠然とした言葉でしか言えないのですが、一回のホームページの閲覧が大事なら、そこに存在感を持たせることを考えなくてはならない時代です。そして、それを実現できるIT関連の企業が、これから重視されるのではないでしょうか。ただ、マスメディア広告代理店の巨頭である電通ですら、ネットのフィールドではセカンドライフの展開に失敗しています。ITも多数の企業がありますが、リニューアル担当の選定には、シビアな選択眼が必要なのかもしれません。