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2008年07月 アーカイブ

2008年07月12日

危機管理

近年、危機管理(リスクマネジメント)と言う言葉が、以前に増して聞かれるようになりました。以前ならこの言葉は、「経営上の損失を回避するための手段」「キャッシュフローなど経営そのものについての対策」などを代表的に表わしていたのですが、最近では使われるシーンが異なってきており、「危機管理」は、ソーシャルな面での対峙を余儀なくされる状況が多いようです。

例えば、偽装・ずさんな処理などのモラル崩壊が明るみに出てしまう。社会通念上において多くの共感を得られない企業倫理と活動。トップや公式回答における失言(※本音)。そういった、事業活動の内部だけに留まらない、社会問題としての危機が増えている(※ないしは明らかになってきた)ように見えています。敢えて例を挙げることはしませんが、もしマスメディアだけに情報を依存していない方であれば、そういったニュースについては当方以上にご存知だと思います。

いくつかの不祥事を受けてか、「コーポレート・ガバナンス=企業統治:企業内部で健全化を進めよう」「コンプライアンス=企業の法令遵守」という言葉が浸透しました。しかし、実際はどうでしょうか。比較的、ガバナンスやコンプライアンスが機能しやすいと思われる大きな組織でさえ、様々な問題が次々と露呈してきています。そして露呈に至る経緯は、ガバナンス活動によって取締役会が問題を自ら提示する例などはほとんど聞かれず、モラルに疑問を感じた告発やリークに端を発するケースや、機関による調査などで、外部から指摘を受けるケースがほとんどです。

このこと自体は、別に不思議ではありません。組織は基本的に閉鎖空間である。会社は社を守ろうとする。強引な手段を採ってでも、業績を確保せねばという意思をもつ。「法人格」の人格において、人間臭い行動原理に基づいていると考えていいでしょう。しかし、そういった人間の生臭い感覚を、外部から見た「組織」において許さないのもまた、人の感覚です。多くの人は、「私企業たりと言えども公器である」という感覚を持っています。とはいえ、見る側の目にも生臭ささはあるのですが、少なくとも双方の立ち位置はそうである・と、まずは前提に考えましょう。

さて、危機管理問題が「次々と露呈してきている」状況下において、その危機を生み出してきた根底にあるものは何なのか?現代の危機管理とは何なのか?こういったことを考えてみたいと思いました。

まず、危機を生み出してきた根底ですが、危機を生み出す問題が、最近になって量産されてきたわけではない・と思っています。管理職扱いの残業だろうが、脱税だろうがパワハラだろうが、昔からあったことです。でも、現代と言う時代背景において、それらが問題となる状況が色々な要因によって出来上がってきたこと・それらが社会に紛れてしまう・カバーできる状況ではなくなってきたこと、それが近年の危機ではないかと考えられます。脱税は論外として、ほんの一例ではありますが、商品やサービスを提供していく上で、偽装などをしなければならない経営状況(※確信犯的に偽装などをして売上を増やしている例は問題外です)があり、所得の問題や人間関係に起因するうつ病などの社会問題が生まれてきたこと(※この問題を、根性が無い・甘え・能力差・性格など、ある種の精神論で片付けてはいけません。能力や責任感のある人がうつ病になりやすい・そういった本質を見る必要あり)などもあります。このような例からは、企業運営が難しくなってきたこと(※経済の縮退傾向)、暮らしの指向が上向きでは無くなって来たこと(※個人の余裕がなくなった)事などが見えてきます。

しかし、危機事態において問題を更に悪化させてしまうのが最近の特徴で、近年の不祥事の中では、「経営陣のモラル」「管理不行き届き」が問題を悪化させてしまう例が多いように見えます。もし、ここから学ぶとすれば、経営の意識をもう一度評価し直す必要があるかも?と考えてみることでしょう。「他山之石、可以攻玉」頻繁に起こる不祥事から、省みて根本的な問題への意識を持つことは、現在の社会において、企業や組織が、重要な成長とステップアップを目指す一段階と考えます。危機は、問題点も対処も、根本的なところから考えることで、回避できるのではないでしょうか。

それでは、危機管理の実際について考えてみます。

危機が起こったときに対策を行う・そのための準備をしておく
メディアや取引先に対して圧力を掛けるなどは、昔から行われていた手段(※力関係)ですが、近年の事後対策手段としては、(1)顧客対策・危機管理対策などの管理部門を設置して、お詫びや対応をマニュアル化しておく (2)最近では、ネットによる情報の広がりが注目(※問題視?)され、問題の沈静化や風説・風評被害を食い止めるために、ネットに張り付いて討論のコントロールや話題を逸らす・対象の掲示板やサービスを荒らす・他の問題に目を向けさせるなどのサービスを行う企業があると聞いています。例えば、こういった企業と契約をしておく。そして、問題が起こった際に出動してもらう。しかし、こういった事後対策は正解でしょうか?人の噂も75日と言いますが、ITによる情報の発信力と分散が進んだ今、インターネットと言う開かれた情報蓄積の場では75日目はなかなかやってきません。よって、今、こういった事後対策を改めて講じることは下策だと考えます。

危機の芽を摘む事前の対策
こちらのほうが難しいのですが、上策です。ほとんどの危機は「人災」です。経営判断や現場の指示などは一番多いケースでしょうが、おそらく誰もが苦々しく思うような謝罪会見をテレビで見たことがありますが、人災以外の何でも無いですね。そのせいで、経営危機に追い込まれる。会社の看板はなくなる。従業員は職を失う。えらいことですね。そう考えると、ネット時代・情報過多の時代において、悪事はどうも割に合わなくなっていますし、間抜けさは致命傷のようです。悪事がバレたらどうするか?を考えるのではなく、損害が起きないように事前の策を打つことが、これからのリスクマネージメントになると思います。というと、マキャベリズム的な考え方で「どう調べても偽装の事実が出てこないようにする」なんていう事前対策もあるかもしれませんが、今の情報時代では、なかなかそうも行かないでしょう(笑)。

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先に、危機を生むのは人災だと書きました。しかし、意識を変えていくことは、社会人にとってたやすいことではありません。黙っていても客が入ってくる状態で働いていた人間は、それが当たり前だと思い込んでしまう。働けば働くほど成績が上がる時代や環境下にあった人間は、努力すればなんでも達成できると思い込んでしまう。他人も自分と同じだと思ってしまう。イエスマンを周りに侍らすのは実に気分がいい。ですが、その「思い込み」は、その人の中で、基本的なロジックや人生訓として植えつけられ、行動原理や基礎的なパッションになってしまいます。この「思い込み」の恐いところは、“他者認識を損なうこと(ワンマン化や裸の王様化)・柔軟性を失うこと(論理構造が硬直して感情に頼る)・挫折や失敗、危急の事態への対処力が皆無になること(自分の想定や論理を超えたことに対処できない)”です。

そして、もしかしたら日本人の多くに言えるのかもしれませんが、第三者に潔さを求める傾向があるように思えます。率直に謝る・引き際を心得るなどなど。ですが、自分のこととなると、往生際が悪いのもまた傾向です。すっとぼける・見苦しい言い訳をする・責任を転嫁するなどなど。

人間ですから、それが自然なのですけれども、その自然をなかなか自分の中に認識として取り込むことは難しい。昨今の危機管理に相当する状況を色々と見るに付け、リスクマネージメントを考える際に、これからは他人事のようなお詫びや美辞麗句で糊塗するだけの、事後危機対策では取り繕えなくなるように思います。つまり、経営陣は失敗を犯さないようにより賢くなる・と思うのです。これは悪賢くなるというのではなく、先に述べた「重要な成長とステップアップ」であって、むしろ小賢しい事をしてしまった組織は、淘汰されるのではないかということです(※この見解の背景には、インターネットの存在があるのですが、些かネットを過大評価した見解でしょうか?)。

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これまで書いたことは、別に目新しい見解でもなんでもないので、書いていながら「何千年も人間は変わらないのかな」などと考えます。最近、プラウト主義経済学を読んでみたいなと思っているのですが、少しだけ聞き及んだ点を見ると、地球規模や民族で許容できたり受け入れることの出来そうな重なりが微妙に薄い印象を受けると共に、こりゃかなり経済的に・社会的に悲惨な状況にならない限りは、人間こうはならないかな?といった感じを受けました。でも、今後の社会的な要求がどこに向かうのか・これからの経済のカギを握るのは何なのか・などを併せて考えると、なかなか面白そうでもあります。

最後になりますが、ITという分野での危機管理というと「情報の管理」に尽きます。こちらは、情報の紛失や流出に関する対策は具体的に講じられますので、情報の電子化や効率化なども併せて、ご相談があればお気軽にお願いします。

2008年07月16日

iPhoneを契機に・現在(いま)のウェブ・リニューアルで目指すポイント

iPhoneの機能ではなく、iPhoneの存在感に注目

iPhoneが発売になりました。機能面や使い勝手など、賛否両論は様々にありますが、Appleらしい商品ではないかと思います。Appleと言えばMacintosh、私が始めて触ったのはSE/30で、その後サウンドの仕事をしている頃まで何台かMacを買い継いでいましたが、その頃からiPod・iPhoneに至るまで、営業戦略やマーケティングに関して多少の揺らぎはあったものの、“Apple”のCI(corporate identity / コーポレート・アイデンティティ・企業の特徴や理念など特有のイメージなど)は一貫しているように思います。iPhoneに関しては、当方の契約しているキャリアが違うので買いませんけれども…(もっとも当方はソフト屋さんですから、ソフトのマイナーリビジョンが上がるくらいまで、どんなハードウェアでも我慢して買わないほうです)。

そのiPhoneとAppleを見ていて思うのですが、そこには確固たる存在感があり、明確な製品イメージ・ブランディングが見えてきます。このことは、ホームページのリニューアルや改装について、学ぶべき点を見せてくれるように思います。そこで、今回のテーマは「ウェブの重要性がより高まり、更にその傾向が進む一方である。そして、誰もが同じように考えるはず。だから、企業や個人のウェブサイトには明確な意図を持たせて、隙を作ってはいけない」として、現在リニューアルをするにはどういったアプローチを採ればいいのかを考えます。

とうに変革の過渡期を迎えているメディアの周辺

その前に、まず製品イメージやブランディングに関して重要な露出である「広告宣伝」についての現在を見てみましょう。今、テレビの広告収入が激減していると聞きます。テレビの番組作りと広告に関する、テレビに近い立場の方々からの辛辣な論評も目にします。昔であれば、特定の企業だけがテレビで広告を出すことが出来て、その影響は計り知れませんでした。テレビで宣伝をしていれば一流企業の証ですし、広告の受け手である視聴者も、そこに安心を見出していました。

その状況が、明らかにインターネットによって変わってきました。情報を結ぶベクトルの先にあったテレビ・ラジオ・雑誌や新聞に、ネットという新たな方向が加わったこと、それは同時に個人が処理できる情報量を上回ってしまうことを指します。つまり、企業(※自社でも個人でも)のウェブサイトを1回見てもらうという機会が少なくなっている=見てもらうことの重要さが増していると言えます。

Appleの方法論や考えを類推する

Appleは、自社のアイデンティティをきちんと確立させるマーケティングで、ブランディングと製品ラインアップに一体感をもたせています。つまり、想定しているターゲットを明確に位置づけており、「リンゴのマーク・白をポイントに使うカラーリング・広告のキャッチコピーやフォント・インダストリアルデザイン」などの全てが、顧客に対してあらゆるシーンで結びつき、一体感を感じるようになっています。言ってみれば、どこの誰にでも買ってもらえる製品は特徴が無い(=アピール力が弱い)、すなわち、明確にAppleの商品を買ってもらえるような「顧客を作る」ことを目指しているというように考えられます。これは、昔から「Mac信者」「マカー」(※主に悪口で使われるようですが、そういう層が存在すると言うことをフラットに考えてください)などの言葉で表わされるように、Apple商品の存在感とその顧客関係が、明確に現れていることからも理解にたどり着けると思います。

ウェブのリニューアルでAppleに学ぶべきは何か?

先の段では、ウェブを見てもらうことの大事さについて触れました。そして、Appleの存在感について述べました。では、Appleの真似をしてウェブを構成してみようか?会社のロゴを全ページに張って、イメージカラーで全ページを彩って、自社の製品イメージをウェブデザインにも取り入れて…なんて、それは間違いですね。と言いますか、現在ならその程度のことは誰でもやっています。

では、Appleの何を学ぶか。それは、その存在感なのです。はっきり言ってしまえば、存在感を演出できるかどうかです。Appleは、自社の製品と購入する顧客の層を明確に位置づけて、それを実現するための様々なマーケティングを行ってきました。ですから、Appleのやってきた戦術は、Appleの持つ戦略に則って行われてきたものであり、結果としてそれがきちんとしたブランドと購買層を作り上げ、更に購買層の拡大を果たした。それこそが、AppleがAppleだからという存在感なのです。それを、そのまま真似しても仕方がありません。

「今」がどういう時代なのかを考える

繰り返しになりますが、一度ホームページを見てもらうことが、今の時代でどれだけ大切なのかを述べました。近年では、医院の廃業や医師の経営難など、昔ならちょっと考えられないような話も耳にします。企業は更に厳しい立場ですが、士業の方、旅館やホテルなどのサービス産業、いずれもウェブの影響はこれから益々大きくなるでしょう。そういった流れを考えると、もしホームページのリニューアルを考えるなら、過渡期である今ではないかと思います。“ホームページ、今のままで大丈夫?”見直してみるなら、今がいい機会だと思います。

存在感はケースバイケースで、「それぞれの企業やサービスの魅力と顧客関係」と言う漠然とした言葉でしか言えないのですが、一回のホームページの閲覧が大事なら、そこに存在感を持たせることを考えなくてはならない時代です。そして、それを実現できるIT関連の企業が、これから重視されるのではないでしょうか。ただ、マスメディア広告代理店の巨頭である電通ですら、ネットのフィールドではセカンドライフの展開に失敗しています。ITも多数の企業がありますが、リニューアル担当の選定には、シビアな選択眼が必要なのかもしれません。

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