上場企業の3月期決算発表は5/15にピークを迎え、その数は過去最多となったそうです。その理由は東証の要請によるもので、当然といえば当然かもしれません。では発表された企業業績はどうだったかというと、円高、一次産品・エネルギー資源の値上がり他、もろもろの理由であまりよくないようです。年の後半には活況を呈するという見方もありますし、企業は落ち着いて力をためる時期なのでしょうね。
決算発表のピークを終えた時節柄、この時期は様々な数字が見えるし、またその数字を見て色々と考える時期と言えるでしょう。ということでIT関連の投資について考えてみたいと思います。でも大規模な話ではなくて、小さな企業や街の商店など多くのケースに向いた内容ですし、大げさな投資でもなく、経営者に限らず管理職の方にも必要とされる、ITの「どんなことに・どの程度のお金を使って・どういう結果を得ようか」という流れにしたいと思います。
●ITの導入には、まず「どんなことをやりたいのか(当方の立場なら「どんなことが必要か?」という提案)」があります。わかりやすい簡単な例で言えば、ホームページによる宣伝や集客の期待・販路の拡大など。または、プロジェクト管理や情報の共有など業務の効率化と社内ノウハウの蓄積など。こういった活用法は、今の時代だとすぐにイメージできると思います。やりたいことは、困っていることから見えてくる・これは、当方の考え方や対応の基本でもあります。もちろん、明らかに「こういうことが必要!」というケースも沢山ありますね。
●次は、どの程度のお金を使って・という点です。決算期というところに話を絡めると、IT導入はコストに反映されますが、大事な点は「コストと結果のバランス感覚を欠いてはならない」ことです。例えば、社内の人が主業務と兼任でホームページを作っているケース、かなり多いです。これがコストと結果において、どのように反映されるか?を、架空の例でケーススタディとしてみましょう。
Aさんは、商品管理や選定を業務内容としているが、その他にホームページをちょっと作れる知識があるので、社のホームページを任されることになった。Aさんは、商品の管理をすると同時に、残業をしてホームページのほうも直さなければいけないことになった。一見、どちらも何とかこなせるように見えているが、実はAさん本来の商品選定や情報収集に割く時間が減り、高かったスキルが損なわれてしまった。社としては、Aさんの本来の能力が低下したことで、その分の業績が落ち込み、Aさんが作ったページも素人の片手間なので売上には繋がらなかった。更に、Aさんの残業代がコストを圧迫することになってしまった(※サービス残業なら、更にAさんのモラルを損ない、業績悪化の危険は高まります)。
Case 2:
Bさんは、間接部門の一員。ブログが趣味で、個人ブログを運営している。社でホームページを作ろうかという話が上がった際に、Bさんは率先して「無駄なお金をかけることはありません。私は自分でブログをやっていますし、私がやります」とその役を買って出た。Bさんの上司は間接業務畑だけにコスト意識が高く、Bさんの部門の業務遂行力に決して余力が無いことを懸念したが、結局そういうことになった。Bさんは仕事で好きなことがやれると、ホームページ作りに精を出した。しかし、本来の業務は怠業ぎみとなり、そのしわ寄せは他の社員に回っていく。最初のうちは「上の決定だから」と周りの社員達も代わりに仕事をカバーしてやるなど、協力的だった。が、部門の繁忙期を迎えて処理の限界に至ったある日、なおBさんがホームページいじりに没頭しているのを見て、部門全体の不満はとうとう頂点に達した…
これらのケースは最悪で、Aさん・Bさんの人的コストと能力を最大限に引き出して、事業に貢献させなかった経営判断に疑問ありと言えるかもしれません。この段階までひどくは無いにせよ、コスト計算や人事的な要素をも加味した見極めに至らずに、多忙・コストをケチるなどの理由で、安易に社内で何とか済ませようとする判断が、むしろ効果を上げなかったり、負担が将来の業績にまで響くかもしれないことは想像に難くありません。コンサルティングの見地から考えなくても、業態として「プロ」が存在する業務を「社内でなんとかする」、もはや現代では甚だ疑問的な方針でしょう。
こういった場合のベストな解決策は、ITを導入するならば、その専門部署や担当者を置くことですが、よほどITに依存するような事業でも無い限り、その固定費負担は軽くはありません。そんな場合には、アウトソーシングに頼ることで、経費の圧迫を避けて決算の数字を向上させられますし、その時点での経営判断としては概ね良しと言えるでしょう。このあたりのバランス感覚や判断が、実は目先にとらわれない上手なIT投資のコツです。
●では、次は「どういう結果を得ようか」という点です。結果=有効な投資ですね。ホームページによるイメージアップや差別化・売上への貢献もひとつ。業務システムの導入で、働く人たちがひとつになって効率よく会社が活動することもひとつ。それらがITへの有効な投資です。しかし、投資が「有効」となるためには「投資先」を考えなくてはいけません。投資先=どんなIT企業と組むか、ということですが、価格だけでも・実績だけでも・経歴だけでも、判断は下せません。色々な側面からの評価が必要ですが、見積りは金額だけを見積もらず、色々な部分まで見積もるつもりで、有効な投資になりそうかを判断する、これまたコツといえるかもしれません。
経営者や管理職の方にとっては、当たり前のようなことばかりで今更な内容でしたが、決算を終えて1ヵ月半経ったこの時期に、「業績があまり良くなかった」「もう少し…」と感じているなら、事業規模の大小や業種などに関わらず、今年度の事業戦略とIT投資について、更に踏み込んで考えをめぐらせるのもいいかもしれません。